その2~3年前にも偶然わが店に訪れていた
そのとき先生と交わした言葉はいまでもはっきりと覚えていて

今度の幹事は誰だよ
まったくしょおがねえなあA野は
早くしなきゃみんなの顔を忘れっちまうよ
十数年ぶりに再開した6年Cクラス
私は先生を見るなり愕然とした
随分と痩せていたからだ
それでも元気よく振る舞いお酒を美味しそうにのみタバコをふかす姿を見て
きっと不摂生がたたって糖尿かなんかの成人病だろう
よおしここは一発たしなめてやろうと
おもったら、癌だというのだ
え~

お酒なんか飲んでいいの? と問えば

万全の体制で来たよ 平気、平気~ なんて楽しそうに笑いとばした
ふうん それじゃきっと早期発見かなんかで案外軽く済んだのかな
それでも、万が一の事を考えてこれから3年に1度の同級会も毎年やらなくちゃね
なんて冗談半分にからかったのに
まさかこんなに早く逝ってしまうなんて
後から聞けば末期だったそうだ
限られた人生を思い残すことなく生きていたのだろう
棺のなかの先生はうっすらと笑みを浮かべ
去年のあのときのままだった
弔問に訪れた人々にやさしい笑顔で接するご夫人
きっと先生のために集まってくれた大勢の方々に嬉しかったのだろう
久しぶりに高校時代の友達にも会わせてくれた先生
楽しかったあの頃をしばし思いで枕にしてみよう
たたり、あのこはひよこじゃくてあひるだよ